状況結合の意味論(AS)とメタ情報中心化の理論(MIC)

  状況結合の意味論とメタ情報中心 化理論とは、言語学で通論と なっている2つの理論を修正そして統合した一貫性のある理論である。その1つは、Predicate Argument Structureと呼ばれる文構成要素に関する理論で自然言語の意味関係をモデル化している理論だが、意味論と統語論が明確に区別され ておらず誤解を招 く。もう1つは、Information Structureと呼ばれる情報構造に関する理論であるが、発話を理解する上に欠かせないメタ情報(含意や常識や発話状況などの言語化 されない情報)を 統語論の一部として扱うところに問題がある。


状 況結合の意味論(AS)


      状況結合の意味論とメタ情報中心化の理論とは、現行の構造言語学における「主述の構造」と「情報の構造」の諸理論を、一貫した方法で変 化させ、統合するものである。意味的状況は、シェーマとその具体化として決定される。それは、関係・ロール・アンカーである。関係の具体 化とはフレームで あり、ロールのそれは参与体であり、アンカーの具体化とは媒体である。(注:状況意味論のフレームは、包含に関しては閉ざされており、 (状態<出来事<通 常の過程< 粒状的過程)の順で位置づけられる。)

 本稿では、抽象的なオントロジーにおける複数のレベルを区別する。動作主、目的主、経験主などといった概念を用いる代わりに、さらにメ タオンソ ロジーの高レベルにおいて、一般化したエージェント(動作体)を仮定したい。こういう普遍的なエージェントは、以下に例を示す数々の特徴 によって、定義さ れる。(1)管理(自立性):目的とフィードバック、(2)感情(個性):願望と意図、(3)認識論的特徴(理由):信念と認知、(4) コミュニケーショ ン(言語能力):音声言語および書記言語。

    筆者らのアプローチにおいては、ロールとアンカーは、 (抽象的)概念の同型的なn個組として判断される。種々のロールは,意味論的に関係する状況において,ニュートラル,能動的,あるいは受 動的な1変数の関 係性として,存在論的に決定される。それらの具体化による(結合)組合せは、中間的ロール(道具、方法など)の派生のきっかけとなる。以 下にメタロールの 例を示す。

(1)能動的 ロール(先導者、原因を生じさせる者、可能にする者、享受する者、執行者、実行する者、刺激物、源、原動力など)、(2)受動的ロール (終わらせる者、原 因、配置、可能にされた者、享受される者、実行される者、経験者、目的など)、(3)中間的ロール(中間者、道具、利益、原動力、方法な ど)

    なお,関係状況の連合体と見なしうる,ある意味状況においては,単一の参与体が,複数のロールを果たしうるということに留意すべきであ る。さらに、筆者ら が「浅部、標準、深部」の3つのレベルに区別することに留意されたい。状況意味論の浅部レベルを特徴づけることは、無生の存在(主体と対 照的に描かれる) が、まるで生きていたかのように意味論的に解釈されるということである。それらによって行われた主動的ロールは「準ロール(quasi- role)」とし て決定づけられる。



メ タ情報中心化の理論(MIC論の最も重要な点)


     メタ情報は,発話における情報の並べられ方に関係する。線的ではない表象をも,テキストの形で順序立てるために,話し手は目的に 沿った注意のものを選択 し,「主述部」を選択しなければならない。このため,MIC論では、「主述関係」はメタ情報レベルのために設けられる。

     ここでは、技術的用語として、導入される主要な概念は、発話のメタ情報を指示する注意中心(Center of Attention – CA)の成分である。しかし、筆者らは、次の3つのレべルで発話内の広域(グローバル)で全般的な注意中心成分(発話の延 長)、および、局所(ローカ ル)で個別的な単一的注意中心成分(発話の核心)に分類した。

(a)主語と補語(基本的な発話)、
(b)話題と焦点( 延長した発話)、および
 (c)一般的なテーマと個別的なテーマ(談話のセッション、対話とテキスト)。

ここで留意すべきは,自然言語の延長した発話現象 を定義づける際の用語とし て,「メタ情報」 は,「 情報」 よりも適切であるということであろう。